エンゲル係数を考えない女
2月9日から姿を消した妻・サイコは未だ現れない。サイコが行方不明になったといっても、みんな仕事で忙しいので捜すようなことはしない。どうせ神奈川県の実家に帰っているのだろうと、みんな思っている。私はサイコから「実家には絶対に連絡するな!」と厳命されているので、サイコの両親に確認することは出来ない。私は「警察に届けた方がいいんじゃないか」と占い師スピ子に相談したが「警察に言うと、うちの会社を調べられるから私の仕事に支障が出ちゃう。絶対ダメ」と言う。「じゃあ弁護士に相談しようかな?」と訊くと「弁護士も同じ。絶対相談しちゃダメ」と言う。スピ子は、サイコがいなくても自分の仕事には支障がないから大丈夫と思っているのか、サイコがいなくても自分には関係ないから問題ないと思っているのか、行方不明のサイコの捜索には消極的である。しかし私とみーとくんには気を遣ってくれる。週に2~3度差し入れしてくれたりする。

2022年3月7日(月)
また少しだけどお裾分け🤏
巻き寿司😆
つまみながらビール🍺でも😄
ズン子さんから今受け取ったよ🍣太巻きとイクラはミートが大好きなので、明日の朝食に決定!
ありがとう❣️いただきます🤗


2022年3月10日(木)
海鮮しお焼きそば
千葉からテイクアウトしてきた😆
ズン子に渡したから夜食か朝たべてー😍
いただきます💕ありがとう😊


3月のある日、マンションの前をみーとくんとふたりで歩いていたら、偶然サイコに出くわした。私が「ママだ!」と言うと、みーとくんは満面の笑みを見せたが、サイコは笑顔も見せず、チラッとみーとくんを見ただけで逃げるように自転車で去っていった。いったいどういう心境なのだろうか? サイコは台東区にいた! この話をスピ子にすると、それ以来、スピ子とズン子からサイコの目撃情報がたびたび寄せられるようになった。スピ子が東上野を歩いていると、サイコの姿を目にしたので叫びながらサイコを追いかけたが逃げられたとか、上野の割といいクラスのホテルに出入りしているとか。「なんでそんな高いホテルに泊まるんだ?」とスピ子に訊くと…、「サイコは自分がセレブだと思ってるからね。ランチもディナーもいつも平気で1万円のとか食べるんだよ! おかしくない?」 それはおかしい。安く見積もっても、宿泊費と朝食・ランチ・ディナーで4万円だ。スピ子がいつもの調子で盛って話しているとしても、1日3万円だ。私が身代金で渡した100万円は33日で消えることになる。そういう計算はサイコにはできない。なぜなら算数ができないからだ。エンゲル係数もサイコは計算したことがないだろう。今のサイコのエンゲル係数は、間違いなく異常な数値を叩きだしているはずだ。

私は占い師スピ子にメールを送った。

2022年3月27日(日)21:52:55
お疲れ様です!
リフォームが終わり明日引っ越します🚛再来週からは渋谷区で生活を始め、GW明けからミートも渋谷区で生活する予定です。サイコはどう考えているかわからないけど、法律で以下のようになっていること、わかっているのかな?
●婚姻前に男性が築いた財産は財産分与の対象になりません。
●別居時に男性が築いた財産は財産分与の対象になりません。
●結婚中に親から相続した財産は財産分与の対象になりません。
3年以上の別居は離婚が認められる可能性を高める要因の一つとなります。あと1年です。私は離婚するけど、サイコが中途半端な気持ちだと困るなと思って、グミ子ちゃんにも、この状況を伝えておいてください。よろしくお願いします。
そうなの?!
ズン子の情報だとサイコは何も知らないって
連絡来ていないって言われたらしい まだホテルにいんのかな?
あたし明日台東区帰るから
調べてみる🤣

サイコは私を自分のATMにしたいと思っている。しかし家族カードを使えなくされ、思うようにお金を私から引っ張ることができていない。サイコが失踪してから、私は生活費の振り込みもしていない。なぜならそれはサイコの逃走資金を与えるだけの行為だからだ。お金が尽きればいずれ帰ってくるかもしれない。もしかしたら、離婚して財産分与などと考えているかもしれないので、そんなに甘くいかないことをスピ子に伝えた。サイコと連絡が取れないのでスピ子に伝えたのもあるが、スピ子がサイコ側についているかもしれないという疑念が生じたからだ。スピ子は基本、無償での占いはしない。サイコからも毎月鑑定料という名のお布施を徴収しているはずだ。それが毎月いくらなのかは定かではないが、もしかしたら給料の大半かもしれないし、私がサイコに支払った100万円がお布施になった可能性もある。だとすれば「毎日素麺しか食べていない」というサイコの話は、ぐっと真実味を帯びてくる。
離婚が成立すると認められるのに「必ず○年の別居が必要」という明確な基準は存在しないものの、一般的には3年から5年が目安とされている。 日本の法律では夫婦には同居義務があるため、長期間別居が続けば実質的に婚姻関係が失われているとみなされやすくなる。私がサイコとの離婚の意思を明確にスピ子に伝えた場合、この状況にどんな変化が起きるのかも見てみたかった。
カールくんからのLINE
私の妻サイコの最初の旦那さんとの間に生まれた長男のカールくん(大学2年生)から半年ぶりにLINEが届いた。半年前の10月、サイコの誕生日をサプライズで祝おうとカールくんと相談していたのだが、私が占い師スピ子にその計画を話したら、スピ子がサイコにサプライズをバラしてしまい、誕生日祝いを台無しにされたばかりか、誕生日当日にサイコが自殺未遂騒動を起こすという大事件が起きた。要するに占い師スピ子は、カールくんとサイコの妹バリ子とサイコの両親が悪の根源だと断定して、そこからサイコに悪が伝染しないように占いで回避しているのである。であるが、結果的にはどんどん悪い方向に向かっている。それ以来のカールくんからのLINEである。

このところカールくんには迷惑しかけていない。本当に申し訳ない。この文面を見てもらえばわかることだが、カールくんは冷静な常識人で母親思いで、何の落ち度もない好青年である。息子のカールくんにまでお金を無心するようになったサイコ。私から奪った身代金100万円は、どうやら使い果たしたようだ。息子のカールくんと妹のバリ子に断られたら、そうそろ頼るあては無くなる頃だろう。
2022年4月18日(月)私の思惑通り、妻サイコからメールが送られてきた。

1月以来3ヵ月以上口をきいていなかったサイコからのメールは、急に手のひらを返したものだった。占い師スピ子が説明し説得してくれたのだろう。今まで敵だと思っていた私とスピ子とズン子が、実は自分の味方だと理解したようだ。私はサイコの敵ではないが、サイコとはもう離婚しようと考えている味方なので、ギリ味方である。そしてサイコは「妹バリ子とバリ子の旦那に騙されてた」と気づいたようだ。実際に騙されていたのかどうかは定かではないが、「悪はバリ子」だと決めつけている。おそらくスピ子の入れ知恵だろうが、妹とも両親とも縁を切ったようだ。そして「私は悪くない」と何度も何度も主張する。スピ子譲りの“自分理論”炸裂である。呆れるしかない。私はサイコと連絡がついて心の底からホッとした。愛する妻が無事だったという安心感よりも、台東区のマンションに置きっぱなしのサイコの荷物がこれでやっと片付けたられるという安心感からである。

私へのメールは、結局お金を無心するためのものだった。妹のバリ子とその旦那に騙されていたから予定していたお金が入らないという言い訳はどうにも解せない。バリ子も旦那も公務員である。副業は禁止されているはずだ。予定していたお金というのは、まさかトクリュウ絡みなのか? いや、そんなことはあるまい。サイコの悪知恵はすぐバレる。「ホテル代金2ヵ月分払えない」というのも嘘くさい。数枚のカードを限度額いっぱい使っているのだろうか。そして「バリ子に盗聴されている」というなんとも不可解なメッセージ。去年10月の結婚記念日事件の際に邪魔を仕掛けてきて、みーとくん身代金事件の黒幕とも目されているバリ子の狙いは、やはりみーとくんなのか。子どもに恵まれていないバリ子夫妻は、仕切り直して本気でみーとくんを奪いに来ているのかもしれない。サイコを監視・盗聴するために、バリ子は探偵でも雇っているのだろうか? それともロシアのスパイが身内にいるのか? 「秀ちゃんとメールしてるのバレないようにしたいからいったん消すね」というのは映画『ミッション:インポッシブル』の真似かもしれない。いや、違う。サイコは「メール消して」なんてことは今まで一度も言ったことがない。「このメール読んだら消して」と私に言ってくるのは、占い師スピ子だけである。今までたいして気にしてこなかったが、スピ子のメールには誹謗中傷や他人を貶めるような内容がたびたびあり、その都度「このメール読んだら消して」と付け加えられていた。だが私は、メール消去などしない。なぜか? それはおそらく貧乏性で大切なものを捨てられない性格だからだろう。そんな性格が幸いにもいろいろな証拠を残してくれている。最後に。私の妻サイコへ。こんな異常なメールを送っておいて「返信いらない」って、勝手すぎるだろ!気になってしょうがないわ!
2歳の息子みーとくんとの新生活始まる
2022年3月19日(土)の渋谷区のマンションのリフォームが完成し、3月27日(日)には貸倉庫に預けていた家具や段ボールが新居に運び込まれた。私はこれから足りない家具を買い足し、段ボールを開梱し、みーとくんと暮らせるように部屋を整えなければいけない。妻サイコの失踪は気になるが、みーとくんの保育園の送り迎えと仕事の合間に新居メイキングをしなければいけないので、サイコを気にかけている余裕はない。


2022年4月25日(月)
スピ子ちゃん、おはよう!
現状の報告です。
4/23(土)にみーとと2人渋谷区へ引越しました。今週は渋谷区から台東区の保育園に通います。GW明けからは渋谷区の保育園に通います。
あれからサイコ子から連絡はありません。引越しのことをメールしたけど返信なし。
今朝登園のついでに台東区のマンションに上がってみると、サイコが訪れた形跡はありませんでした。
これ以上サイコに振り回されたくないので、離婚届書きます。
メイちゃん&ライトくん、ご近所さんに3ヶ月預かってもらってたけど、ゆうべ我が家に戻って来ました!家族3人での同居は諦めます。
2022年4月26日(火)
やつは
あたしに月曜日に必ず連絡すると
約束したが
あたしが頼んだことやらないわ
嘘をついたから
限界で
あなたと二度と会いたくないと
解雇のメールを昼にしたんだけど
返信こない😳
頭がイカれてるよ本当。


オレには週末に連絡すると言って、結局連絡なかった。
こんなにいい加減な人間が世の中にいることに愕然としてる😱

みーとくんはゴールデンウィーク明けの5月6日(金)から渋谷区の保育園へ通い始めた。園長先生には正直に「妻は育児ノイローゼで失踪中なので連絡は取らないでほしい」とお願いした。そして占い師のスピ子にもお願いをした。

2022年5月18日(水)
サイコと連絡がつかず、両親とも連絡を絶っているようなので、警察に失踪届・捜索願を出して、弁護士に離婚の段取りをしてもらおうと思います。でないと、台東区のマンションが片付かないし、オレとミートが前へ進めない。
スピ子ちゃんの名前は出さないけど、グミ子ちゃんには連絡がいくかもしれません。よろしくお願いします。
えまだ連絡やりとりしてないの?
やばくない?普通に
ホテルにいたよ🤯
しかも親とかなり連絡とっていて
ってズン子が言ってた
やはりあたしが入らなきゃだめなのね_| ̄|○
まじ全無視してたわ
あたしようやく
回復
長かったー
あたしの名前
とか
まじ困るから
迷惑にしかならない😭😭😭
サイコにブチ切れ絶縁したんだが
間はいるから
まだまってー
20日に台東区いくから
ひでくる?
一緒にサイコのホテル行くとか
うちら
トムくんも40度でて
本日
ようやく起き上がれたレベル😱だった
すでに10日たつ
あたしが
秀、ミート助けるわ!
どうしたいか教えて
離婚か
さえこを救うか

占い師のスピ子は咳が止まらないらしく10日間寝込んでいたらしい。スピ子は「警察」や「弁護士」と言う言葉に過敏に反応するので、敢えてそのワードを入れたメールを送ったら、案の定返信が送られてきた。

2022年5月19日(木)
家族3人で一緒に暮らしたかったし、サイコを救いたい気持ちもあるけど、もう一緒に生活はできないと思うし、そのつもりもない。一緒の未来が想像できない。
サイコには家族愛がない。
7月20日に台東区のマンションの契約が切れるので、それまでに鍵を返してもらって、離婚届を書いてもらいたい。お互い新しい人生を歩むのがいいと思うし、オレはミートとふたりで歩んでいく。
2022年5月20日(金)
昼間にズン子経由で
サイコすぐ捕まって
借金とか詳しく聞いた!
👇
多分バリ子の洗脳でおかしくなって
全て子供も捨てた
カード80万円
今月支払い40万円
クレジット会社から借りた借金20万円
お金がないから親とバトルし
生活費少し貰った
稲葉さんに生活を助けてもらえれば
裁判しないしミートあげるし
戦わないと約束した
らしい、、
夕方
サイコ見に行くね!!


ついさっきサイコから頭のおかしいメールが来たよ。
要はお金くれってことなんだけど、オレはもう何もしてあげる気はないんだ。
今サイコがすべきことは、
上野のマンションの荷物を片付けて7/20までに出て行くこと。
離婚届に判を押すこと。
今入っているサイコ名義の保険について解約手続きをすること。
よくわかっていないと思うので、理解させるの大変だと思うけど、よろしくお願いします。
2022年5月21日(土)01:28:33
いやー参った参った
長時間
やばすぎて話にならないから
頭悪すぎて意味不明、、
とにかく誤解だと意味不明
だから
あなたには愛がない
自分中心の最低人間だと伝え
ズン子ブチ切れ
離婚するつもりなく
ミート捨ててない
裁判しない
秀は尊敬している
バリ子は絶縁する
バリ子に騙されていた
親は頭が悪すぎて話にならない
自分を悪者にされる
お金ないのは借金のせい、
自分は悪くない理由がある
いまの借金さえかえせたら
必ず普通にもどる
自転車操業だから
本当にやばいだとか
誰もあんたの話しは聞いてない
こちらが被害者だ
あたし時間無駄なんだ
離婚し浮浪者になる運命だったじゃんと予言通りと伝え
明日までに、あたしが伝えたことを理解して
秀を苦しめてる反省し
どう結論だすかを宿題にした
が
まじスーパー疲れた😂😂😂
とりあえず
明日またズン子仕事終わったら夜呼び出す😂😂😂
喉痛いからまた話す🤯


ありがとう。
お疲れ様でした。
ミートが寝なくて付き合ってまだ起きてる💦眠い🥱💤
出産するまでのサイコとはいい感じだったけど、その後家族3人で暮らすことは一度もなく、どんどん幸せではない方向に行って、サイコの頭のおかしさはもう無理だ。
自分は悪くないって言ってるうちは、どうにもならないだろうね。
普通には戻らないよ。犯罪者の思考回路だもん。もう関わり合いたくない。
おやすみなさい⭐
2022年6月21日(火)の午前中、占い師スピ子とその妹グミ子が渋谷区まで来てくれて3人で話をした。もちろん私の妻サイコの話である。サイコの身柄が確保されたというか、サイコの潜伏先が特定されたというか、サイコから事情聴取ができたというか、どうやらそんなことらしいのだが、「どうもサイコさんは頭がおかしいみたい」とグミ子は言う。それはよく知っている。2年ほど前からサイコの頭はどんどんおかしくなっている。「いえ、なんか記憶喪失みたいな…」「え?」鼻から牛乳、寝耳に水な報告だ。「稲葉さん、心の準備だけしておいてください」と言われた。記憶喪失なんて、映画やテレビドラマでした見たことがないので信じられない。経験したことがないので、心の準備は難しい。1週間後、サイコを含めた4人で会うことになった。
失踪した妻が記憶喪失になって帰ってきたReturns

占い師スピ子からのメールは、いつもいつも恩着せがましい。「徹夜続き😂今日は昼から撮影🔮」とか「
グミ子も28日町内会の会議を行かず来てくれる」とか、仕事忙しいアピールがいちいちうるさい。漫才のネタの最初の“つかみ”のようなものと思えば、少し面白く感じられるか…。でも笑えはしない。なぜなら1週間前から約束していた日時だからだ。
この話も第16章まで来て、ようやく第1章のフリに戻ることができた。私の妻サイコが突然姿を消したのは、2022年2月8日(火)のことである。それから4ヶ月半。今日は2022年6月28日(火)。サイコを見つけて正気にさせて、私と会う段取りをつけてくれたのは、妻を雇ってくれている会社の店長のグミ子と、会社の社長のスピ子。スピ子はグミ子の姉で、本業は占い師である。
今は誰も住んでいない台東区のマンションでサイコと会うことになった。マンション近くのコンビニで占い師のスピ子と待ち合わせをして、一緒にマンションに向かう。「ヒデは海外行ってたことにするから」と、突然スピ子が突拍子もないことを言い出した。「どこにする?」「じゃあインドネシアで。油田の発掘してたってことで」と冗談で答える。なんでこんな設定がいるんだ?
「もう時間が無いから。会うのは1時間だけね。サイコが混乱しちゃうといけないから」とスピ子は言う。しかし説明してくれないと混乱するのは私の方だ。1週間前に「サイコは記憶喪失らしい」という報告を受けた時点ですでに私は混乱している。その上、変な設定をされて、しかも時間は1時間だけ? コントにしては長尺だが、夫婦久々の再会にしては短すぎるだろう。せめて映画上映時間の2時間くらいの尺は欲しいところだ。
そうこうしているうちに、私の妻サイコが姿を現した。知っている妻ではあるが、知っている最近の妻ではない。ニコニコしているのはいいとして、やたらテンションが高くて、それも無理しておバカキャラを演じている感じがする。占い師スピ子がおもむろに「髪切った?」と聞いた。
「ヒデちゃんが白川郷の旅館の仲居さんの髪型がいいって言ってたから切ったんだよ」と答えたが、それは付き合いたての4年前の旅行での出来事だ。ほろ酔いでいい気分になった私が、3姉妹の仲居さんに社交辞令を言ったことに、妻がとても嫉妬してしまい、その晩は関係修復不可能な状態になってしまった。その後一言も会話を交わさないまま、残りの1泊2日の奥飛騨温泉旅行をしたのをよく覚えている。
どうやらそれが、妻にとって一番最近の記憶。ここ3~4年の記憶がすっぽり抜けているようだ。私たちの間には、2020年1月5日に生まれた息子がいる。恐る恐るスマホで2歳の息子の写真を見せると「かわいいね。ヒデちゃんに似てるね」と完全に他人事。妊娠して出産して2歳になるまで育てたことを一切忘れている。育児ノイローゼで育児放棄して失踪してすべて忘れた妻が、目の前で笑顔でいる。グミ子が言っていた「記憶喪失みたい」というのは、どうやら本当らしい。
失踪した妻が戻ってきたといっても、これから私が面倒を見ることになるわけではなさそうだ。占い師スピ子と妹のグミ子が「サイコはうちらで面倒を見る」という空気を部屋中に充満させている。こうして、妻サイコとの再会は1時間で解散となった。
第17章へつづく
第17章へつづく。
第15章へ戻る。
第1章へ戻る。