ー第20章ー 爆弾投下します

サイレント・イブ

 2022年12月19日(月)の朝、私の妻サイコは2度目の失踪をした。とはいえこれから、クリスマスに年越し、お正月にみーとくんの誕生日とイベントが続くので、サイコはそのうち帰ってくるだろうと軽く考えていた。案の定12月22日(木)には、以前からお願いしていた約束があったので、サイコは仕事を早く切り上げて保育園のお迎えをして寝かしつけをするまでやってくれた。その日の夜遅く私が家に帰ると、サイコはみーとくんと一緒にベッドで眠っていた。よかった。朝起きたらサイコに感謝の気持ちを伝えよう。

 朝はだいたい8時に起きる。翌朝起きると、サイコの姿はなかった。みーとくんだけがベッドで眠っていた。サイコにLINEを送ったところ既読はついたが、返信はなかった。このところ夫婦関係が微妙だったので、クリスマスの予定は特に立てていない。明日はクリスマス・イブだ。祝い事とプレゼントには目がないサイコのことだから、きっと連絡が来るだろう。…と、私は思っていた。が…、何もなかった。みーとくんのもとにはサンタさんはやってきたが、私のもとにはサイコさんはやってこなかった。

 私とみーとくんは、そのままふたりで新年を迎えた。元日は上野アメ横の初売りで、サイコは店頭に立っているはずである。私はみーとくんとふたりで占い師スピ子の妹グミ子が店長を務める店舗に顔を出した。狭い店の奥のカウンターにはサイコの姿があった。みーとくんは早速ママに甘えている。私はグミ子に新年の挨拶をし、みーとくんはグミ子からお年玉をもらった。私はサイコに挨拶をしようと振り返ると、サイコは野良猫のような素早さでどこかへ逃げていった。いや、野良猫ではない。お魚くわえたドラ猫の速さである。グミ子を見ると「え?」という表情で「どういうこと?」と私に呟いた。おそらくサイコにはスピ子から「ヒデとは会うな!しゃべるな!逃げろ!」という指令が出ていたのだろう。この様子を見ると、おそらくグミ子は事情を呑み込めていない。普通に驚いて固まっていた。

 2023年1月1日(日)、結局私はサイコと何も話すことができなかった。1月5日はみーとくんの誕生日なので、この日はさすがに帰ってくるだろうと待っていたが、帰ってこなかった。とはいえ、私とみーとくんが住む渋谷区のマンションにはサイコの衣類や荷物がすべて残されたままなので、いずれ帰ってくるだろう。…と思っていたが、それ以来、私は妻サイコと言葉を交わしていない。そして占い師スピ子とも言葉を交わしていない。

私が妻サイコに送った最後のLINE

私はある重大なことを思い出してしまった

 妻のサイコは、なぜ半年もの間隔をあけて2度目の失踪に踏み切ったのだろう? 私はしばらく考えた。そもそもなぜ、半年前にサイコはブクブクに太って私の前に現れたのだろう。かつてのサイコは普通にメイクやファッションに興味があり、体型も気にして食事やダイエットにも気を使っていた。少なくとも妊娠するまでは異常な様子はなかった。妊娠して出産して退院して、という時期も正常運転である。おかしくなったのは、退院して神奈川県の実家で産後の療養をしていたころからだ。サイコが突然「犬がいる家では一緒に暮らせない」と言い出し、占い師スピ子の助言により台東区で暮らすようになってからは、坂道を転げ落ちるように雪だるま式に太っていった。スピ子が言うには「サイコが激やせしたから食べさせてる」ということだった。確か「1週間で5キロ太らないと罰金」みたいなことをスピ子はサイコにやらせていた。気がつけばそのうち、夜食に必ず何か食べるようになったサイコは、旅行に行っても旅館での夕食後にペヤングの超大盛を食べていた。スピ子の事務所からは毎日弁当や差し入れなどの食料を盗んでくるようになり、サイコのお腹は三段腹になっていった。

 三段腹で思い出した。私はとても重要なことを思い出してしまった。

 もう15年以上前。2010年2月12日(金)頃の話である。当時私はスピ子とラジオの仕事をしていて、その日私はスピ子と当時のマネージャーのローターと3人でいたと思う。収録終わり、コンビニで東スポを買ったスピ子は、記事を見て笑い転げていた。その記事に載っていたのは、コザカナちゃん(仮名)という元グラビアアイドルである。「ミスマガジン」のグランプリに輝いたコザカナちゃんは、一時期はアッキーナやオシリーナとユニットを組むほどブレイクしたものの、2009年に24歳の若さで芸能界を突如引退した。2007年10月にコザカナちゃんは人気バンドのボーカルとの熱愛が発覚してしまい、不倫疑惑も持ち上がる騒動になったが、その後破局。スピ子とコザカナちゃんは以前から面識があったようだが、この破局や引退前後から、コザカナちゃんはスピ子に傾倒していったようだ。スピ子が誰かと交わす会話の中で、コザカナちゃんをバカにする発言をたびたび耳にしてきていたので、コザカナちゃんはスピ子の仲良しグループの一員で、イジられキャラかおバカキャラなのだろうというのはわかっていた。スピ子とその周りは、コザカナちゃんのことを「マボ」と呼んでいた。なぜ「マボ」だったのかは、聞いたような気もするが、忘れた。「麻婆豆腐がうんぬん」みたいな話だったような気もする。そして、この時の東スポには、丈の短い白いシャツを着てピンクのミニスカートを穿いて、ニッコリ笑顔で三段腹を露出するコザカナちゃんの姿があった。おバカキャラの友だちがこんな姿で夕刊紙に載っていたら、そりゃ大爆笑するであろう。しかし、グラビアアイドル全盛期を知っている私からしたら、少なからず違和感があった。髪型はモンチッチのような短髪になり、セクシーなグラビアアイドルの面影はまったくなくなっていた。とはいえこの時の私とコザカナちゃんは、以前グラビア撮影を一度したことはあったものの、それっきりなのでほぼ面識はない状態。なのでこの時の騒ぎは、少し距離を取って見ている感じだった。

 この当時、スピ子の取り巻きだった女子は、レコード会社aからデビューしたガールズグループdのARを筆頭に、カリスマギャルモデルのMT、巨乳グラビアアイドルのAH、LGBTQでオネェタレントのYだった。巨乳グラビアアイドルのAHは今もスピ子と仲がいいかもしれない。ガールズグループdのARとカリスマギャルモデルのMTは、その後スピ子と仲たがいしたようだ。特にMTについてはスピ子が何度も陰で悪口を言っていたので、仲たがいは間違いないだろう。スピ子の周りには、スピ子の占いに魅了された人が多く集まる。特に女子はスピ子を頂点としたスピ子カーストの奴隷になりやすい。とはいえ芸能人の場合は自己顕示欲が強いので、そこまでスピ子にどっぷりハマることにはならないのだが、ごく稀にそんな人も現れる。コザカナちゃんはそんなひとりだった。

オマエがいると周りに迷惑がかかるから隠せ

 あの時のコザカナちゃんが異常な状況だったと知ったのは、数年後のことだった。ネットの記事でその事実を知ったのだが、今はその記事が見つからないので、最近のネット情報をいくつか紹介したい。

 2025年1月14日、元グラビアアイドルのコザカナちゃんがmisonoのYouTubeチャンネルに登場し、洗脳されていた過去について語った。2009年に芸能界を突如引退したコザカナちゃんは、その後、全盛期より20kg以上激太りした体重71kgの姿でイベントに出演し、ファンのみならず世間を騒然とさせた。その後は、10年間の保育園勤務の傍ら、保育園プロデュースやメンタルコーチングなどさまざまな資格を取得し、幅広く活動。現在は「株式会社グラビアアイドル」を立ち上げ、代表兼タレントとして芸能界復帰を果たしている。

 そんなコザカナちゃんは、misonoのYouTubeチャンネルで過去について赤裸々に語った。2人はかつてカリスマギャルモデルのMTの誕生日パーティーで出会ったといい、コザカナちゃんは “ドンキホーテで売っている馬の被り物のようなもの”を被って参加していた。その際、コザカナちゃんは「世間をお騒がせさせているから、皆さんの周りに私がいたり、一緒にパーティーしてたらご迷惑をおかけするから、私はいなかったこととして過ごします」と、被り物の理由を説明したという。私が思うにMTの誕生日パーティーをオーガナイズしたのは、占い師スピ子だろうと思う。スピ子はパーティーが大好きで、「こんな感じでやりたい」と言えば、企画やらお金やら何でもやってくれる人が周りに揃っている。私もそんな一人だったが、この時はまだお呼びではなかった。

 そのことについてmisonoが回想したところ、コザカナちゃんは「私洗脳されてたんだけど、その洗脳した人にやらされてたの」と衝撃告白。洗脳者から「オマエがいると周りに迷惑がかかるから隠せ」と言われて、被り物をしていたと明かした。

 だいたいの方がご想像している通り、洗脳者とはスピ子のことである。スピ子はmisonoとも仲が良かった。私はスピ子に連れられて渋谷のライブハウスにmisonoの彼氏のライブを観に行ったことがある。すぐ近くの席にはmisonoの姿があった。スピ子はよく私に、misonoの姉の性格の悪さを笑って話していた。「だからmisonoかわいそうなんだよ」と。

 コザカナちゃんは、洗脳されていた時のことはほとんど覚えていないという。洗脳された期間は1年余りだったといい、洗脳が解けた経緯についても語った。「洗脳されてる時に本当になんかお金が尽きちゃって。お金をもらわず、洗脳者の仕事も手伝わされたから、生きていくにはお金を稼がなきゃダメじゃない? だからもう死ぬか、お金を稼ぐかの選択を迫られて」と話したコザカナちゃん。「要するに死のうと思ってたのよ私」といい、misonoから「何歳で?」と尋ねられると「24」と答えた。

 そして「もう終わりにしようと思って、遺品整理的な気持ちで実家に帰って。それで片付けようと思って。で、片付けてたの本当に。そしたら卒アルとかが出てきて、見てたら自分の将来の夢とか卒アルに書くじゃん? アイドル、パン屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生って書いてあって。で、私、アイドルはやってて。パン屋さんもケーキ屋さんも実はバイトで学生の時にやってたの」と話した。続けて「私はその時に自分の意思で物事を決められなかったから、洗脳されてて。芸能する時も私、スカウトされて始まってるから、自分の意思で決めてないって思ってたの。だから私は人生を自分の意思で決めていないと思って、じゃあ最後に保育園の先生をやって、そこから終わるかどうか決めよう。一個残ってるから」と述べた。

 「保育園で働こうかなってところから、それこそ遺品整理をやめて、で、そこから保育園で働き出したことから、少しずつ社会復帰をしていったんだよね」と明かしたコザカナちゃん。しかし、洗脳者はコザカナちゃんの社会復帰が気に入らなかったようで、コザカナちゃんへの暴言は激しさを増していく。さらに暴力も振るうようになり、コザカナちゃんは「洗脳者との関わりはダメなことなんだ」と気づき、離れることができたという。

オマエの脳みそ腐ってんな

 2025年7月の「ABEMAニュース」でコザカナちゃんはこう語っている。
「ほんとオマエの脳みそ腐ってんな」みたいな。
「バケモノだから愛されないもんね」みたいな。
ずっとそう言われていました。洗脳されてる時は、その人が良くしてくれてると思ってるので。

 コザカナちゃんは、1年半に渡る洗脳生活の実態と、今も残る後遺症について、
「ガリガリガリガリ肌を引っ掻くというか毟るような、それが傷で残っちゃってるので…」と語っている。
コザカナちゃんが洗脳されたのは23歳か24歳の時から。芸能活動をやっている最中から洗脳が始まっている。
芸能を初めて4年で、後に人生を狂わせることになる占い師と出会った。
ある番組で、その占い師と関わるタイミングがあり、そこでコザカナちゃんが、
「このまま芸能続けて大丈夫なのか」という悩みを相談したところ、とても親身に答えてくれて話しやすかったそうだ。
「本当にいい相談相手になっていただけたっていう感じでした、最初は」と語る。

 しかしその関係は、少しずつ歪み始めた。
まずは「周りの連絡先は消した方がいい」「番号変えて」とか。
そうなると必然的にその占い師の声しか入らなくなってくる。
基本的にずっと暴言を吐れていたそうだ。
「本当オマエの脳みそ腐ってんな」みたいな。
「今はバケモノだから愛されないもんね」みたいな。

 他人に私のことを紹介する時も「この子は私の奴隷だから」「何でも言うこと聞くから」という感じで紹介されたそうだ。
当時のコザカナちゃんは「そっか、やっぱ自分が悪いからこうやって言われるんだ」と思っていたという。
「自分を許せないので自分を傷つけないと気が済まない」
「体を傷つけない代わりに、頭皮を血が出るぐらいに引っ掻くみたいなことをずっと、
ガリガリガリガリっていうのを1時間以上、血がつくことで安心するみたいな」と当時を振り返る。

 15年来の友人であるLGBTQタレントのYさんも、占い師とコザカナちゃんの歪な関係を間の当たりにしていた。
「その占い師は、ものすごいプライドの高い方なんですよ」
「ふざけんな!」みたいな。「とっとと掃除しろよオマエ!」みたいな。
「奴隷」とか「犬」とか、ずっとコザカナちゃんは言われていたそうだ。

 その占い師は当時、中目黒か神泉のマンションに住んでいた。
その占い師の家では、よくホームパーティーが行なわれていたそうで、
コザカナちゃんが色々運んだり皿を洗ったりで、全然食べられなかった時、
その占い師は「あんたのやつあるわよ」と言って、みんなの食べ残しを渡して、
その時コザカナちゃんは「美味しい美味しい」って、みんなを笑わかしながら食べたあと、隠れて「あー!」みたいな奇声を発していたそうだ。そしてYさんは続ける。
占い師が「奴隷」って言ったときに「そういう言い方やめたほうがいいよ」って言ったら、
「違うの、そういうことじゃないの、コザカナはできないから」って言ってて、後日コザカナちゃんから電話が来て、
「占い師にあんなことは言わないでほしい。私が全部怒られちゃうから」って。
その時、「え?この関係性っていったい何?」って思ったそうだ。

 占い師と出会っておよそ1年後の2009年、コザカナちゃんは突然芸能界を引退した。
その翌年には、激太りした姿が世間をざわつかせた。これも占い師から「太れ!」と言われ、従ったことによるものだった。

 では、どのように洗脳状態から脱却したのか?
そのきっかけを、友人のLGBTQタレントのYさんが目撃していた。
占い師の家で、コザカナちゃんがバーンって顔面を殴られ、「誰に口聞いてんだよてめぇ」って。
コザカナちゃんは「その時に、あ、やっぱり絶対違う」って目が覚めた感じがあったと語る。
その後すぐ「今までお世話になりました。ありがとうございました」というメールを送り、そのまま終わって、返事は返って来なかったという。
こうして1年半に及ぶ洗脳生活は終わった。

 現在のコザカナちゃんは、洗脳は解けているそうだが、プレッシャーを感じることがあると、当時に似た行動を取ってしまうそうだ。頭だけじゃなく、腕をガリガリ引っ掻いたり、それが傷で残ってしまっている。洗脳は今もうっすら残っている。

 私は、この話を100%信頼できる。
LGBTQタレントのYさんは、スピ子がプロデュースする「ゴブンノサン」というユニットのメンバーだった。Yさんがメディアに露出する前の話だ。5人組のメンバーのうち3人がLGBTQだったので、スピ子が「ゴブンノサン」と命名した。メンバーにはスピ子の元マネージャーのローターもいて、ダンスの振り付けは元J事務所のアイドルが担当した。
ミュージックビデオは、私が監督・構成・撮影・編集した。
ロケ地は明治公園と、カリスマギャルモデルMTのセレブなマンションの中庭だった。
そのミュージックビデオはYouTubeでは公開していないが、私の手元にはある。

占い師にハメられた

 2016年、コザカナちゃんは「爆報!THEフライデー」に出演した。
コザカナちゃんは現在何をしているのかという取材に答え、激太りした当時の体重は、クラビアアイドルなのに71キロまで激太りしたものの、現在30歳の姿を披露すると、すっかりスタイルはよくなっていた。
コザカナちゃんが芸能界を引退したのには、占い師が関わっていたそうだ。
当時、写真週刊誌「FRIDAY」にコザカナちゃんと人気バンドのボーカルとの不倫を報じられたのは、占い師にハメられたということだ。そのハメられた話というのを「じっくり聞いタロウ」という番組で話していた。

 コザカナちゃんが親しくしていた男性についての恋愛相談。その男性というのは、人気バンドのボーカルで、コザカナちゃんのマンションで一緒に食事をすることになっていた。そしてその場に占い師も誘っていたものの、当日「マンションの場所がわからなくなったから外まで出てきて」と頼んできたそうだ。そうしてコザカナちゃんは「何回も来ているから知っているはずなのに」とおかしく思いながらもエントランスに出てきたら、その時に、人気バンドのボーカルとコザカナちゃんのツーショットが撮られて、その後写真週刊誌に載ってしまった。
完全に占い師に裏切られて、写真週刊誌に売られたということだ。

 当時、人気バンドのボーカルは、超人気ガールズグループSのIEさんと結婚していたものの、その報道により離婚。コザカナちゃんの不倫によってふたりが離婚することになり、コザカナちゃんには世間からの非難が浴びせられた。そこで、占い師に裏切られたことを知らないコザカナちゃんは、よりにもよって、その裏切り占い師に相談してしまう。そして、激太りを勧められたのだ。「そうすれば目立つから二ュースになって取り上げて貰えるよ」といった感じらしい。コザカナちゃんは実際食べまくり、激太りして二ュースになった。つまり占い師に完全に洗脳されていたということである。

 実際私は、コザカナちゃんと人気バンドのボーカルの話をスピ子から何度か聞いている。コザカナちゃんは彼のことを「ダー」と呼んでいた。仲の良さそうな二人をスピ子はどうも気に入らない様子で、スピ子の話からそれは伝わってきたが、私には関係ないことなのでスルーしていた。

だったらもっと太りなさい

 2025年5月24日付の「文春オンライン」。インタビュアーとコザカナちゃんのやりとりをざっくりと紹介しよう。

――その女性からは、どんなアドバイスをされたんですか?
細かいことは記憶から消してるんですけど…、最初、不安を煽るようなことをたくさん言われたのは覚えています。ひたすら「今のままだと危ない」とか言われて、要するに、さらに不安を煽られるんですよね。そうすることで、相手に「じゃあどうしたらいいの」ってすがりつかせる心理を醸成するんです。そのうえで、「こうしたらいい」ということをズバリ言う。不安な心理状態の時って、「こうしろ」と言い切られたい欲が強いんですよね。助言された方が楽なんです。

――ハッキリ道筋を示してくれる人が欲しかったんですね。
まさにそうです。あと、これは“洗脳あるある”なんですけど、相談者の周囲から“洗脳に都合の悪い”人を排除していくんです。私の場合も、「あの子と会わない方がいい」とか、「この人は会った方がいい」とか、人間関係がジャッジされていきました。判断能力を失っているので、「この人だったらいいよ」と勧めてくれるのは楽だったんですけど、そうしたら、会っているところを週刊誌に撮られて。

――でも、コザカナちゃんをコントロールしようとしてきた人にとっては、何がメリットだったんですかね?
私も、その人は何がしたかったかずっとわからなくて。ただ長年かけてたどり着いた答えとしては、シンプルに、他人が見た目でチヤホヤされているのが嫌だったんだと思います。だって、私はお金をとられたり、何かを買わされたことはないんですよ。そんなことより太らされたし、ブログで暴言を吐くように仕向けられて。グラドル時代、体重は50キロなかったのに、半年で75キロぐらいにまで太らされて、腰はガタガタ、肌もボロボロ。負荷のかかりすぎで、身体は悲鳴を上げていました。

――太りなさいと言われて、「わかりました」って感じだったんですか?

そうですね。やることを明示してほしいから、素直に従うんです。しかもグラドル時代、食については我慢が当たり前だったから、「何でも好きなだけ食べていい」と言われると、最初は嬉しいんです。とはいえ、それは5キロ増ぐらいまでで、あとは苦行でした。別に元々が大食いではないので……。とにかく食べまくるだけなんですけど、胃もそんなにすぐには大きくなってくれない。“量より質”で勝負という発想になってからは、カツカレーにバターをのせたものばかり食べてました。バターは液状になるから、少ない量でカロリーをたくさん摂取できると思ったんです。けど、その後吐くこともしょっちゅう。吐きたいわけじゃないんですよ。キャパオーバーで、戻してしまうんです。でも、吐いたら太れないから、吐いては食べて、食べては吐いて……。肌も荒れに荒れて、痛くて痒くて。でも無意識のうちの“グラドル魂”で、目に見える肌には傷をつけたくないから、血が出るほど頭を掻きむしっていました。ある意味、自傷行為だったと思います。

――コザカナちゃんが太っていく姿を見て、その女性は褒めてくれるんですか?
褒めてくれます。でも「よくやったね、よかったね!」って褒めた後に、「話題になりたいんでしょ、だったらもっと太りなさい」ってさらに発破をかけられる。ゴールはないんです。

――ライブで撮影されたお腹ダルダルの写真は衝撃でした。
ああいう写真になるようにスタイリングしたのも、その占い師なんです。お腹を丸出しにしたほうが太って見えるからって、スカートはウエスト部分をわざわざ折って。

――当時、太っていく自分をどう思っていたんですか。
“洗脳”されている間は自分の心は存在しないので、“無”ですね。鏡に映る自分を見ても、「これは誰?」と他人事。でも、ずっと死にたい、死にたいって叫んでいた気がします。

――先ほど、「自傷行為があった」と。
最後の本能が残っていて、“やりたくない!”という叫びが、自傷行為につながっていたのかなと今では思います。「もう死にたい、死にたい、死にたい!」って言いながら、1時間以上、血がダラダラ出るまで頭皮を引っ掻き続けていました。

――よくその状態から抜け出せましたね。大変だったかと思います。
“洗脳”されながらも、死にたくならないようにどうにかしなきゃっていう意識がどこかにあったんですよね。死にたいと思うことから逃げたかったんです。

同じ種類の生物が発見された

 コザカナちゃんが炎上した当時、2009年11月9日付の「ナリナリドットコム」による記事を紹介しておこう。

 11月6日に発売された写真週刊誌「FRIDAY」で芸能界引退を報じられた元グラビアアイドルのコザカナちゃんが、“個人ブログ”とされるブログで怒りを露わにしている。1日に同ブログで報告した通り、芸能界から引退することは否定していないが、同誌の記事に「激太り」「相手の男性は一般の方」と書かれたことが許せないようだ。

 7日に“個人ブログ”で更新されたエントリー「デブじゃないし…フライデイ」では、FRIDAYを手にした写真を添えて、「まず言わせてもらうけど デブじゃねーし…てか パンピーでもねーし…」と同誌の記事の“誤り”を指摘。「コザカナさん 一応 トップアイドルなんだけど!?」「このミスマガの体をぉぉおぉおお どこからどう見たら 『激太り』なんて言葉が出てくるの!?」と怒り心頭だ。また、交際相手が一般人と伝えられたことについては「私のダーが一般人ってどうゆうこと? い ち お う れっきとした イケメンミュージシャンなんだけど? やっぱムカつく イライラ」と納得がいかない様子。そして過去の恋愛にも触れ、「今まで本当にちゃんと付き合ったのは ミュージシャンとお笑いの人だけだし 本命はミュージシャン以外ムリだし(まあ遊びは別ね)」「誰も一般人とか 売れないヤツとは付き合わないって~(爆笑)キャハハー」と、かなり弾けた告白もしている。

 こうした発言の数々や、過去に更新されたエントリーの内容からブログは炎上状態に。しかし、1日の引退報告のエントリーとは文体が全く異なることや、かつて公式ブログで更新されていた自分撮り写真とは撮り方が異なるように見えることなどから、2ちゃんねるやmixiのコミュニティ界隈では、“個人ブログ”とされるこのブログ自体がニセモノではないか、との声も上がっている。

☆“コザカナちゃんの個人ブログ”でのコメント
「シャネルの時計壊れたから、新しいの欲しいのに…フツー買ってくれるでしょ? かわいーくおねだりしたのにさっ まったく 前までの男だったら通用したのに…クソッ」(11月6日)
「昔はバカとしか付き合ってなかったからなあ 本当にバカな男達だったわ(笑) 思い出すだけで寒気する(笑) 私に騙される男って ホントかわいそう(笑)」(11月6日)
「欲しかったネックレス あんだけ忘れないで買ってきてってたのんだのになんで忘れんの?
さいてー この間なんてバックも持ってくれないし あ~あ 男ならしっかりしろよ!」(11月3日)
「ダーリンは本当に優しくて~♪ プレゼントとかいっぱい買ってくれるの♪ 何でも夢を叶えてくれる素敵な人です~」(11月2日)

 なんだかこのキレ方、私は見たことがある。デブ加減といい、文章の弾け方といい、二重人格といい、コザカナちゃんと私の妻サイコは、同じ種類の生物である。いや、同じ種類の生物ではあるが、それを操っているのは、紛れもなく同一人物。スピ子だ。アジテーションの効いたメッセージの文体はほぼ同じ。スピ子によって扇動されて書いたものだろう。当時のコザカナちゃんも大変だったであろうが、今の私の妻サイコも大変であろう。

 ゆえに、これから、私は、妻サイコの救出作戦に入る。

第21章へつづく

 第21章へつづく。

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